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サックスの選び方【中級編】アタリ個体、ハズレ個体って何??

投稿日:2020年7月2日 更新日:

サックスのアタリ個体、ハズレ個体ってどういうこと?(マウスピースも同じ)

  • 結論から言うと、サックスにはやはり「アタリ/ハズレ個体」が存在します。
  • ハズレ個体になってしまう一番の要因は「微細な品質のバラつき」にあります。
  • ハズレ個体を「アタリ個体」にすることは可能です。(ただし条件つき)

 

みなさん「ハズレ個体」「アタリ個体」って聞いた事あるとおもいます。

サックスの世界では良く耳にするワードですよね。

家電なんかでは1つの商品、例えば「ソニーのアルファ・セブン、デジタル一眼」を買いたいと思ったら どこで買っても新品商品のスペック・品質はかなりの確率で全く同じですよね。(たまに不具合がある”ハズレ個体”もあるにはありますが)

これに対してサックスは、同じ機種、同じモデルでも店頭に並んでいる1本1本が、操作性や音の出しやすさなどに微妙な違いがあります。

家電と同じような販売・陳列なのでどうしても全部同じもの、と思ってしまいますが、実はかなりの個体差があるのがサックス=楽器なのです。

 

アタリ個体とハズレ個体はどうやってわかるの?

そういった事実を頭に入れて、店頭で同じモデルを2~3本吹いてみるとその中に

「なんか吹きやすいもの」「なんかふきにくいもの」が出てきます。

これを「アタリ」「ハズレ」で言い表したりします。

でも、この差ってなんで出るんでしょう?同じメーカーの、同じ機種なのに…??

サックスに「アタリ個体」「ハズレ個体」がある、という認識は、かなり浸透しているのですが、 どうしてこういう差が出てくるのか…?

についてはほとんど知られていません。

 

アタリ個体ってどういう感じ?

アタリ個体とは、同じモデルを何台か吹き比べている時に、

「自分にぴったり!」と感じる個体です(かなりざっくりな説明ですが笑) 。

具体的には…

  • 自分が苦手、音がひっくり返りやすい、と思っている音やフレーズがスムーズに出る!
  • いつもは引っかかるフレーズがうまく演奏できる!
  • 単純に出音が良くて「おお〜」っと言ってしまう

 

とにかく、「アタリ個体」に出会うといつまでもそのサックスを吹いていたくなります。

ちなみにサックスを選ぶ時にこの「ずっと吹いていたい」個体かどうか、

はご自分のサックスを選ばれる際に基準にされることを強くおすすめします。

 

ハズレ個体はどういう感じ?

アタリに対して、ハズレだと感じる時は、以下のような状態です。

  • 低音・最低音が出しにくい
  • 他の同じモデルと比べて音のつながりが悪く感じる
  • 吹いていてなんとなく音がこもっている感じがする

 

ハズレ個体で感じる違和感とは、

自分の練習不足からくる場合の違和感とかなり似ているので見落としがちです。

ですが、よほど練習せずに吹いている場合を除いて、

 

「自分の練習不足」と考えてしまう違和感ー「低音がちゃんと出ない」「高音部がひっくり返る」などはサックス本体のせい、という場合がかなり多いです。

 

ハズレ個体は無くならないの?〜新品サックスも完璧な状態ではない!

ハズレ個体の原因のほとんどが 本当に細部の微細なズレのせいだったりします。

その結果、ちゃんと音は出るけどなんかスッキリしない…くらいの違和感で

「人によっては気になる程度」のようなものでしかありません。

そのために購入時には気づかないケースがほとんどです。

また、実はリペア職人さんに調整をお願いしてもこの「微妙な違和感」を取り除くことができないことも(結構な割合で)あります。

これは正直、リペア職人さんの腕しだいの部分なので、

1人のリペア職人さんに「ダメだよこれ。」と言われても、

「気のせいじゃない?」と言われても

めげずに他の職人さんをあたってみる‥という根気も必要になってきてしまいます。

(そんなところに時間と神経を消費しないで、練習なんかに時間を割きたいところですよね。)

 

サックスは全く同じ品質で作るのはむずかしい

ご存知の通り、サックス(だけでなく楽器全般)は「一部の工程で手作業が必要」です。

  • ベル部の成形
  • 各キィパーツの取り付けとバランス取り
  • タンポの調整・貼り付け

など、どうしても人の感覚に頼らざるを得ないので、品質を完全に同じにすることはできないのです。

また一般的な総合楽器店などでは、販売店の店員さんにそれを伝えても

「人によって感じたり感じなかったりするレベルの違和感」ということで、

店員さんとしても別の在庫を勧めるくらいしか対処法がない、というのが現状です。

また、時間が経つにつれ状態が変わってしまうもの、

例えば「タンポ」や「オイル」が原因ということもあるので、完全に「ハズレ」をなくすことはほぼ不可能だと思います。

 

新品のサックスを一度組み直すお店も

この「ハズレ個体」について対策を施している販売店(大手管楽器専門店など)も存在します。

そういったお店では入荷した新品サックスを店頭に並べる前に一度バラしてしっかりと組み直す、

という手間を加えている場合が多いです。

 

サックスを嫌になってしまうことも

わずかな違和感なら気にしなくて良いんじゃない? と思われるかもしれません。

ですが、この「微妙な違和感」のせいでサックスが思うように上達しなかったり、

サックスを吹くのが楽しくなくなったり、

さらには「自分が下手なせいだ」とサックス自体を諦めたり、嫌になったりする原因になることも意外に多いのです。

 

ハズレ個体の原因

ハズレ個体と感じる違和感には「抜けの悪さ」や「反応の悪さ」など音質によるものがほとんどで、

その要因は大まかに以下の3つに分類できます。

ハズレ個体の主な原因

  1. 管体組み上げの”甘さ”によるもの
  2. 機種の特性によるもの
  3. その個体の特性を考えていない均一な調整・交換によるもの

原因その1.管体組み上げの”甘さ”によるもの

最初にも触れましたが、サックスは最終的に手作業で組み上げるため、

大量生産を目指すほどに品質のバラつきが出てくるようです。

これは世界的メジャーブランドでも例外ではありません。

つまり、この原因の場合はしっかりとパーツを組み直すことでハズレではなくなります。

 

原因その2.機種の特性によるもの

サックス(楽器)というのは「ある部分・要素を補強したり強化したりすると、必ずどこかの要素が犠牲になっている」という性質を持っています。

 

これは例えば、以下のような感じです。

両立できない要素の例

  • 「音を遠くまで響くように」したサックスはたいてい「吹きやすさ」が犠牲になります。
  • 「吹きやすさ」を強化したサックスは「音の重厚さ」が犠牲になります。
  • 「熟練職人さんによる手作業」が多い楽器は味のある奥深さを備えますが、大量生産の視点で見ると品質にバラつきが生まれたりします。
  • その逆に「均一な品質」を強化すると「個体の個性」が犠牲になりがちです。

 

こういったことから、「ハズれ」と感じる部分がそのモデルのコンセプト上、

避けて通れないポイントだったりすることもあるのです。

その場合、「カスタマイズ」という選択肢も必要になってきます。

カスタマイズは「豊富なサックス知識や、

新旧のあらゆる個体を調整した経験や色々な検証をした経験」と言ったリペア職人さんの腕に左右される解決法も出てきます。

私の体感上、このハズレ個体をアタリ個体にまで復活できる調整をしてくださるようなレベルのリペア職人さんは「全国でもほんのわずか」です。

 

原因その3.その個体の特性を無視した「一般的な」調整・交換によるもの

「原因その2」に絡んでくることですが、その時代時代のモデルの特性上

、管体には少なからず「犠牲になっている箇所」というのが存在します。 例えば、例を挙げると

  • 90年代初期のセルマーシリーズ2テナーサックスには構造上オクターブ上のソ周辺がひっくり返りやすい(同じ機種でも、ある特定の製造時期にだけ見られるもの)
  • ソプラノ・サックスは構造上、高音域のピッチが不安定になりやすい
  • ジュビリー直前のシリーズ2は構造上、低音域にウルフ・トーンがでやすい(同じ機種でも、ある特定の製造時期にだけ見られるもの)

などです。 こう言った各モデルの特性を知った上で

調整とカスタマイズをほどこすことができる職人さんが必要になります。

各モデルの特性や背景を知らずに新品と同じ調整、あるいはどの個体も機械的に同じ調整をしてしまうリペア職人さんも意外に多いようです。

中古サックスやビンテージ・サックスで「アタリじゃない」と感じる個体のほとんどが、

この原因でハズレ個体もしくはイマイチ個体となっている場合が多いです。

ですから、こう言ったレベルの調整になると

「単に息漏れを防ぐのが調整」というリペア職人さんではカバーできなくなってきます。

 

修理だけではなくカスタマイズもできるリペア職人さんを探そう

このレベルになると、まさにアメセルと同じですね。

(アメセルとは、アメリカ国内で組み上げられたセルマー個体ですが、

組み上げの際 ジャズ向きの明るくオープンな音色と軽い操作性を引き出すため、

職人さんが1本1本その個体にあったカスタマイズと調整を加えていたことで有名です。)

ただし「独りよがりのカスタマイズ」をするリペア職人さんは厳禁です。

ほどこされたカスタマイズで問題が解決したか、

できればその職人さんに手がけてもらったサックスや評判も前もって調べるようにしましょう。

 

「ハズレ個体」でもあきらめる必要はない(優れたリペア職人さんが必要)

それではこの「ハズレ個体」に当たってしまったら諦めるしかないのでしょうか。

そんなことはありません。 ほとんどのサックスは、

それがたとえ100年前のモデルであったとしても 立派に演奏、愛用できる個体に復活させることが可能です。

ただし、それには「あらゆるサックスの個性・特性や音響的な検証、知識を備えたリペア職人さん」が必要です。

 

まとめ

アタリ個体に出会った時は本当に嬉しいものです。

でもハズレ個体の方が圧倒的に多い〜これが今のところ悲しい現実です。

この記事を最後まで読んでくださった方は、

そんなハズレ個体も、経験豊富なリペア職人さんに託せば復活どころか

「アタリ個体」にもなる! ということがお分かり頂けたと思います。

 

タンポの微妙な貼り方、キィオイルの種類や挿し方、バネの加減など…

その1つ1つは笑ってしまうほど些細なものですが、

これが驚くほどに出音や操作性に影響するのを

私自身、何度も体験しました。

こう言ったことはマウスピースにも当てはまります。

サックスやマウスピースを手に入れる際はぜひ、

信頼できそうなリペア職人さんも「かかりつけのお医者さん」として

探しておくことをおすすめします。

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