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アメセルはいつから?マーク6以前のアメセルの見分け方

投稿日:2021年7月28日 更新日:

今回の記事で身につく知識

今回の記事はアメセルについて以下のことがわかるようになります。

  • アメセルがどのモデルから存在するのか、がわかります。
  • アメセル彫刻のないアメセルも見分けることができるようになります。

目次

アメセルはいつから??

ビンテージ・サックスといえば『アメセル(アメリカン・セルマー)』ですね。

ネットで「アメセル」をググってみると、

“アメセルとはセルマー・フランス本社で製造されたパーツをアメリカに輸入し、アメリカ国内で組み上げたもの。モデルでいうとセルマーのSBA以降(S.B.A Mark6 Mark7)です。”

…とたいてい書いてあるのですが、果たして、アメセルは本当にSBA以降のものに限られるのでしょうか??

結論から言うと

「アメリカで組まれたセルマー」つまり「アメセル」は『SBA/スーパー・バランスド・アクション』よりはるか以前の『modele26/モデル26』まで存在します。

 

ここでいうアメセルとは、

  • H&A Selmer(いわゆるSelmerUSA)を通して…
  • アメリカで組まれた…
  • アメリカ独自彫刻が彫られている…

サックス管体のことです。

『アメセル』と『フラセル』の違いについては以下の記事をごらんください。

アメセルとフラセルの違い

 

アメセル彫刻以外の意外な見分け方

<↑左がアメセルに見られる”U.S&CAN”の刻印と”NEW YORK.ELKHART”の文字。右がセルマー・ロンドンの刻印。この(アメセル)刻印パターンは何度か変更があり、上記の刻印デザインはバランスド・アクションからマーク7までのものです。>

アメセルに関する見分け方は良く「アメセル彫刻とフラセル彫刻のデザインのちがいで区別する」と言われますが、

マーク7期になると彫刻がない個体のほうが多かったり、「アメセル彫刻」「フラセル彫刻」といわれる彫刻デザインがマーク6以降のもので、それ以前のモデルを見分ける判断には使えなかったり…といまいち不十分です。

あまり知られていませんが、

本社「フランス・セルマー」以外が販売したセルマー・サックス(※)には、ちゃんと「どこが販売したものか」という刻印がはいっているのです。

※セルマーには実は「セルマーUSA」以外にも「セルマーLONDON」「セルマー・Düsseldorf/デュッセルドルフ(ドイツ)」という販売代理店が存在していました。

その中でフランス・セルマーのオリジナル・モデルを販売していたのは「セルマーUSA(H&Aセルマー。以下セルマーUSA)」と「セルマー・ロンドン」で、独自の彫刻が見られるのは「セルマーUSA」のものだけのようです。

※中にはこういった「U.S&CAN」刻印がはいっていないアメセル個体もまれに存在するようです。

実際、海外サイトでは「US&CAN」の刻印がない、素晴らしいアメセル彫刻がはいった個体も見られます。(しかもオリジナル彫刻&ラッカーと説明されています。これが出品者側の見落としなのか、充分な検証の結果なのか…はわかりませんが、このサイト『GET A SAX』はかなり信用のあるサイトです。)

※1970年前後には他の業者が後彫りで”アメセル彫刻”を入れていたケースも多いのですが、こういった個体を見分ける方法もある程度確立しているので、たいていは「アメセル彫刻の後彫り」や「アメセル・ラッカーのあとがけ」は見分けることが可能ですが、まれに「どう見てもオリジナルのアメセル・ラッカー、アメセル彫刻なのに”刻印なし”個体」というものも存在するようです。

セルマーUSAのロゴ

<↑左がアメセルのロゴ。右がセルマー・ロンドンのロゴ。ちなみにアメセルのロゴに見られる”NEW YORK”の文字はModele26までで、それ以降のCiger Cutter〜Radio Improvedまでは”ELKHART””INDIANA”の文字に変わります。>

上記のとおり、実は「セルマーUSA(H&A Selmer)のロゴ」が存在します。

もうすこし詳しく解説すると、”モデル26”から”ラジオ・インプルーヴド”までのモデルにはこの「セルマーUSA独自」のロゴが刻印されています。

ちなみに、セルマーUSAだけでなく、当時のセルマーの販売代理店(セルマー・ロンドン)も独自のロゴ・マークを刻印していました。(上記の画像右側)

<↑「Ciger Cutter」以降のアメセル・ロゴ。セルマーUSAは1927年に拠点をニューヨークからインディアナ州のエルクハートに移したため、”ELKHART”と”INDIANA”に変わっています。>

バランスド・アクション以降になるとこのロゴはなくなり、アメセルは「US&CAN」の刻印が、「セルマー・ロンドン」は「LONDON」の刻印がはいるようになります。

現在とおなじで、彫刻に関しては”彫刻なし”の個体も存在しますが、そういった個体でもこの「US&CAN」や「LONDON」刻印はちゃんと刻まれています。

 

Mark6より前のアメセル彫刻

今度は、MARK6以前の各モデルをさかのぼりながら、各『アメセル彫刻』を見てみましょう。

マーク6マーク7の「アメセル彫刻」は花が咲いているデザインパターンで統一されていることが知られていますが、それ以前のものはいろいろなデザイン・パターンがあります。

※マーク6とマーク7のアメセル彫刻についてはいろいろなところで解説されているので、今回はS.B.Aからとりあげます。

S.B.A/スーパー・バランスド・アクションのアメセル彫刻

<↑左はSBAテナー・サックス 3万5千番台のアメセル彫刻。SBAでよく見られる彫刻パターンです(画像元:DC SAX   )。右はマーク6〜マーク7期のアメセル彫刻デザインの原型のようなパターン。5万3千番台のSBAアルト・サックス・アメセル(画像元: GET A SAX)。>

<↑左が”セルマー・ロンドン”の3万2千番台SBAアルトサックス。ロンドン個体は彫刻を後から追加していない個体が多いのでこれらはフランスのオリジナル彫刻です。この「フランス彫刻」に見られる”ベル部の丸い装飾デザイン”はマーク6まで確認できます。右画像が 4万4千番台 SBAアルト。(どちらの画像もGET A SAX)>

上の画像が“アメセル彫刻”で下の画像が“フランス彫刻”です。また、今回のテーマとは関係ありませんが、左上の画像で確認できるとおり、S.B.Aの「前期モデル」ではベル部キィガードが1こ1こ分かれたものがとりつけられています。

Balanced Action/バランスド・アクションのアメセル彫刻

<↑左が”フランス彫刻”(2万7千番台テナー・サックス 画像元:DC SAX)。フランス彫刻はシンメトリックなモチーフの組み合わせでヨーロッパのガラス彫刻のようなデザイン。対して右側の2万7全番台テナー・サックスのアメセル彫刻はとにかくにぎやかな印象です(画像元:GET A SAX)。このアメセル彫刻に見られる丸い窓の中に景色が描かれている彫刻パターンは、バランスド・アクション期によく見られるアメセル彫刻ですが、実はこれは上記の”SBA”で紹介したフランス彫刻パターンに後からデザインを加えたものなんです。>

この時期のアメセル彫刻は丸い窓の中に景色が彫られているパターンが多いのが特徴です。(山や湖、お城などのいろいろなパターンが存在します)

実はこの“丸い窓の中に景色パターン”フランス彫刻のデザインに後で追加彫刻をしたものです。

Radio Improved/ラジオ・インプルーヴドのアメセル彫刻

<↑左が2万番台ラジオ・インプルーヴド・テナー・サックスの”フランス彫刻”。右が1万8千番台ラジオ・インプルーヴド・テナー・サックスの”アメリカ彫刻”。画像元:GET A SAX

ラジオ・インプルーヴド期以前(モデル26まで)は以下のような特徴が共通して見られます。

<modele26〜RadioImprovedのフランス彫刻>

ベル部にあるロゴの周辺だけにちょっとしたデザインパターンが彫られているだけ、というものがほとんどです。中にはゴージャスな彫刻が施された個体も存在しますが、”アメセル”とは全く違うデザイン・パターンです。(下記の『フランス版の豪華彫刻』をごらんください。)どちらかというと現代の”ジュビリー・モデル”の彫刻デザインに近いです。

<modele26〜RadioImprovedのアメセル彫刻>

フランス彫刻に豪華な花草のデザインを追加して彫ったもの。ベルを埋め尽くすように彫られているのが特徴です。

Ciger Cutter、Non Ciger Cutterのアメセル彫刻

<↑1万7千番台のシガーカッター・テナー・サックスのアメセル彫刻。右はベル正面から見たところ。画像元:GET A SAX

Modele26のアメセル彫刻

<↑左は1万番台のモデル26アルト・サックス・アメセル(画像:サックス買取ラボふくおか)1927年以降の個体なのでセルマーUSAのロゴには「ELKHART」の刻印が見られます。ロゴ追加彫刻がなくオリジナルの装飾的な彫刻のみ(リラッカー)。右は1926年の5千番台のモデル26。セルマーUSAのロゴが「NEWYORK」刻印です。こちらは豪華な彫刻ですが、GP管体なので特別彫刻を入れていたようです。おそらくフランス彫刻です。(画像:GET A SAX)>

フランス版の豪華彫刻

<↑H.セルマー・フランスのHPに掲載されているModele22。一番右の画像を御覧ください。とても豪華ですが、アメセル彫刻とは全く雰囲気が違うことがおわかりいただけると思います。画像: Selmer France

ここで参考までにフランス版の豪華彫刻を見てみましょう。こちらの画像は本家「セルマー・フランス」のホームページに掲載されているものです。
こちらはモデル22です。とても豪華な彫刻ですが、よく見るとアメリカ彫刻とはデザインの内容や彫り方が全然ちがうのがわかると思います。

ちなみにこちらのモデル22、セルマーのロゴマークが現在のロゴと違いますよね?

これはどうしてなのか??について興味のある方は下の記事を御覧ください。

セルマー以前のサックス〜1936年までのセルマーはクランポンより「格下」だった!

 

また、セルマーの歴代モデルについて詳しい記事を『前編』『中編』『後編』にわけて書いています。公式にもまだ未掲載のレアモデルも解説しています!こちらもぜひ。

歴代セルマー・サックス解説!【前編】

 

まとめ

いかがだったでしょうか。バランスド・アクション〜モデル26のような機種は
マーク6などとくらべて個体数そのものがすくないため、アメセルかフラセルか?などと比べたり選んだりするのは難しいです。

また、アメセルの特徴としてよく挙げられる「U字管接合部のハンダ付け」はSBAの中期くらいからやっと見られます。

古いセルマー個体をネットなどでみかけたときは、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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