TASAKISAXのブログ

「ふくおか」から中古サックスの魅力についての知識と独自のサックス情報を発信します!

中古サックスの魅力

サックスの「Low Pitch」と「High Pitch」

投稿日:2021年2月10日 更新日:

ヴィンテージ・サックスで見られる「Low Pitch」刻印

ヴィンテージ・サックスをみると、よくシリアル・ナンバーの下に

  • LOW PICH

と刻印されているものがあります。

これは何かというと

LOW PICH刻印とは

まずピッチとは

  • 「基準になる”ド”の音の周波数を”低く”合わせてある楽器だよ」と言う意味です。
  • そして現代はこの「LOW PITCH」が標準になっています。
  • つまり昔の楽器は今より”高い”音の周波数=High Pich」と言うことです。

昔のサックスはHigh Pitch

saxorama.com buescher

↑Buescher”True Tone”のカーブド・ソプラノ。 (1917年頃/シリアル・ナンバー29688)1917年頃はすでに現代と同じLOW PITCHが主流ですが、この頃まではこのような”HIGH PITCH”モデルもまだ製造されていました。<画像元:saxorama.com※古い規格から更新されていないサイトなので、リンクは貼っていません。>

現代は

  • A=440Hz

つまり「Low Pitch」です。

この440Hzとは、ピアノの「ラ」の音を出した時、ピッチメーターなどで計測すると「440Hz」と計測される音「ラ」を使って、みんなの楽器をあわせる、ということです。

これが1800年代までは

  • A=456Hz

が主流でした。

↑現代ピッチ(LOW PITCH)のピアノと”HIGH PICH”ソプラノとの”実験”演奏。ピッチの違いでこんなに違うのか!というのがわかります。オンチすぎてとても最後まで聴けません…

動画元:VANDORENTV

 

High Pichのサックスというと、1800年代後半にすでに製造を開始していたサックス・メーカーとなるので、世界的にも限られます。

具体的なブランドでいうと、

  • C.G.Conn
  • Buescherの初期モデル
  • Buffet Cramponの初期モデル
  • RAMPONE & CAZZANIの初期モデル

などの1800年代後半〜1910年前後の一部の管体です。

その中でも特にC.G.Connはかなり後の時代になる1930年代までHigh Pitch管を製造しています。

C.G.ConnのHigh Pichモデル(Mシリーズ一覧)

以下の一覧はConnの「Mシリーズ」と呼ばれるシリーズです。

ご覧の通り、Low Pitch管と並行してHigh Pithc管が作られていたのがわかります。

※『』内がモデル名。(Connの歴代モデルについてはこちらの記事をご覧ください)Mシリーズはいくつかのモデルにまたがって製造されていたケースが多い。

下記の記述に関してですが、例えば『New Wonder/Transitional/Artist』という場合はニューワンダー、トランジショナル、アーティスト…の3モデルに渡って製造された、という意味です。

  • 2M (Low Pitch) 『New Wonder』 Cメロ・ソプラノサックス
  • 3M (High Pitch) 『New Wonder』 Cメロ・ソプラノサックス
  • 4M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 カーブド・ソプラノ
  • 5M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 カーブド・ソプラノ
  • 6M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 アルト
  • 7M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 アルト
  • 8M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 Cメロ・テナー
  • 9M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 Cメロ・テナー
  • 10M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 テナー
  • 11M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 テナー
  • 11M (Low Pitch) 『Artist』 Low A付き バリトン(現代の通常バリトン)
  • 12M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 ショート管バリトン(Low-Aなし)
  • 13M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 ショート管バリトン(Low-Aなし)
  • 14M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 バス
  • 15M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 バス
  • 16V (Low Pitch) 『New Wonder』 Eb管 Contrabass サリューソフォン
  • 18M (Low Pitch) 『New Wonder』 Bb管 ソプラノ
  • 19M (High Pitch) 『New Wonder』 Bb管 ストレート・ソプラノ
  • 20M (Low Pitch) 『New Wonder』 Eb管 ソプラノ
  • 21M (High Pitch) 『New Wonder』 Eb管 ソプラノ
  • 22M (Low Pitch) 『New Wonder』 Conn-O-Sax (F管 アルト)
  • 24M (Low Pitch) 『New Wonder』 F管 メゾ・ソプラノ
  • 26M (Low Pitch) 『Connqueror』 アルト
  • 28M (Low Pitch) 『Connstellation』 アルト
  • 30M (Low Pitch) 『Connqueror』 テナー

<参考資料:saxpics

-中古サックスの魅力

執筆者:

関連記事

no image

ヤナギサワの『ブロンズ管体』サックスを吹き比べてみた

ヤナギサワのブロンズ・ブラス管体 今回はヤナギサワの『ブロンズ・ブラス管体』をメインにいろいろ比べてみようと思います。 現在までで、ヤナギサワの『ブロンズ管体サックス』として手に入る中古サックスは以下 …

KING(ゼファー以降) シリアルナンバー 製造時期の比較表〜ヴィンテージ・サックス〜

キングの代表モデル・製造時期の比較表 今回はキング・サックスの「ゼファー」モデル以降のシリアル・ナンバーと製造時期の表です。 キングの全モデルの製造年表についてはこちらの表をご覧ください。 ※表を横ス …

no image

ヤマハ、ヤナギサワ、セルマー の特徴〜サックスの選び方【入門編】

「ヤマハ,ヤナギサワ、セルマー」サックスの世界的3大メーカーの特徴を知ろう! サックスの定番ブランドといえば「セルマー」「ヤナギサワ 」「ヤマハ」(順不同)です。 その3大メーカーの立ち位置を大ざっぱ …

C.G.Conn ltd最後のモデル『D.J.H.Modified』

「コーン・リミテッド」名義、最後のモデル「D.J.H.モディファイド」とは?? 前回の記事でも触れましたが”C.G.ConnLtd”名義で製造した最後のサックス・モデルが「D. …

KING サックスで価値が高いモデルはどれ?〜ゼファーとスーパー20の全てが分かる!〜

KINGの黄金期モデル「VOLL True〜VOLL TRueII」「ZEPHYR〜ZEPHYRSpecial」「Super20」 今回はキング全盛期モデルである VOLL TRUE II/ヴォル・ト …