ヴィンテージ・サックスで見られる「Low Pitch」刻印
ヴィンテージ・サックスをみると、よくシリアル・ナンバーの下に
- LOW PICH
と刻印されているものがあります。
これは何かというと
LOW PICH刻印とは
まずピッチとは
- 「基準になる”ド”の音の周波数を”低く”合わせてある楽器だよ」と言う意味です。
- そして現代はこの「LOW PITCH」が標準になっています。
- つまり昔の楽器は今より”高い”音の周波数=High Pich」と言うことです。
昔のサックスはHigh Pitch
↑Buescher”True Tone”のカーブド・ソプラノ。 (1917年頃/シリアル・ナンバー29688)1917年頃はすでに現代と同じLOW PITCHが主流ですが、この頃まではこのような”HIGH PITCH”モデルもまだ製造されていました。<画像元:saxorama.com※古い規格から更新されていないサイトなので、リンクは貼っていません。>
現代は
- A=440Hz
つまり「Low Pitch」です。
この440Hzとは、ピアノの「ラ」の音を出した時、ピッチメーターなどで計測すると「440Hz」と計測される音「ラ」を使って、みんなの楽器をあわせる、ということです。
これが1800年代までは
- A=456Hz
が主流でした。
↑現代ピッチ(LOW PITCH)のピアノと”HIGH PICH”ソプラノとの”実験”演奏。ピッチの違いでこんなに違うのか!というのがわかります。オンチすぎてとても最後まで聴けません…
High Pichのサックスというと、1800年代後半にすでに製造を開始していたサックス・メーカーとなるので、世界的にも限られます。
具体的なブランドでいうと、
- C.G.Conn
- Buescherの初期モデル
- Buffet Cramponの初期モデル
- RAMPONE & CAZZANIの初期モデル
などの1800年代後半〜1910年前後の一部の管体です。
その中でも特にC.G.Connはかなり後の時代になる1930年代までHigh Pitch管を製造しています。
C.G.ConnのHigh Pichモデル(Mシリーズ一覧)
以下の一覧はConnの「Mシリーズ」と呼ばれるシリーズです。
ご覧の通り、Low Pitch管と並行してHigh Pithc管が作られていたのがわかります。
※『』内がモデル名。(Connの歴代モデルについてはこちらの記事をご覧ください)Mシリーズはいくつかのモデルにまたがって製造されていたケースが多い。
下記の記述に関してですが、例えば『New Wonder/Transitional/Artist』という場合はニューワンダー、トランジショナル、アーティスト…の3モデルに渡って製造された、という意味です。
- 2M (Low Pitch) 『New Wonder』 Cメロ・ソプラノサックス
- 3M (High Pitch) 『New Wonder』 Cメロ・ソプラノサックス
- 4M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 カーブド・ソプラノ
- 5M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 カーブド・ソプラノ
- 6M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 アルト
- 7M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 アルト
- 8M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 Cメロ・テナー
- 9M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 Cメロ・テナー
- 10M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 テナー
- 11M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 テナー
- 11M (Low Pitch) 『Artist』 Low A付き バリトン(現代の通常バリトン)
- 12M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 ショート管バリトン(Low-Aなし)
- 13M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 ショート管バリトン(Low-Aなし)
- 14M (Low Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 バス
- 15M (High Pitch) 『New Wonder/Transitional/Artist』 バス
- 16V (Low Pitch) 『New Wonder』 Eb管 Contrabass サリューソフォン
- 18M (Low Pitch) 『New Wonder』 Bb管 ソプラノ
- 19M (High Pitch) 『New Wonder』 Bb管 ストレート・ソプラノ
- 20M (Low Pitch) 『New Wonder』 Eb管 ソプラノ
- 21M (High Pitch) 『New Wonder』 Eb管 ソプラノ
- 22M (Low Pitch) 『New Wonder』 Conn-O-Sax (F管 アルト)
- 24M (Low Pitch) 『New Wonder』 F管 メゾ・ソプラノ
- 26M (Low Pitch) 『Connqueror』 アルト
- 28M (Low Pitch) 『Connstellation』 アルト
- 30M (Low Pitch) 『Connqueror』 テナー
<参考資料:saxpics>