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サックスの特徴〜マイナーチェンジはなぜ必要なのか セルマー・ヤマハ・ヤナギサワに見る音と吹奏感の要素

投稿日:2020年7月27日 更新日:

動画などでもお伝えしていますが、サックスの特徴として「頻繁なマイナーチェンジ」があります。同じモデルでもいろいろなマイナー・チェンジ・バージョンが存在するのは、どの主要メーカーも同じです。

サックスの音と吹奏感は「バランス」できまる

それでは、なぜそんなにマイナー・チェンジが必要なのでしょうか? まずは結論から。

サックスがマイナーチェンジし続けるわけ
  • 楽器の大前提として「どちらかの要素に特化すると、相反する要素が削がれる」
  • 微妙なさじ加減で「吹奏感」「音色」の関係が変化する。
  • 「吹奏感」と「音色」のバランスは絶対・普遍なものがなく試行錯誤=マイナーチェンジが続く。

2つの主要な要素が「相反する」というのはサックス(というか楽器全般の)の最大の特徴です。

サックスの「吹奏感」と「音色」を決める基本的なポイント

サックスの「吹奏感」と「音色」のバランスは、正解がなくどのメーカーも試行錯誤を続けている、ということがお分かり頂けたでしょうか。

それでは、この2つの要素の割合を変化させるにはどういったやり方があるでしょうか。

サックスの仕様の変化は見た目的な変化だけ取り上げられがちですが、実はサックスの「吹奏感=吹きやすさ」と「音色」を変化させる一番大きな要素としては、以下のものがあります。

息の抵抗感、スピードが変わる最も大きな要素

パッと見はわかりにくい部分ですが、各メーカーの機種の違いは、結局のとところ
「管体のテーパーとネックのバランス」(そして選ぶマウスピース)で主要なキャラクターが決まると言っても過言ではありません。

テーパー

ネックの差し込み口からベル接合部までの管体の口径差です。このテーパーの「ネックからベルに向かっての管体の広がり具合」管体の息の流れ方、スピードが変わります。
息の流れる量やスピードが変わるということは、トーンホールを開ける位置やそれに伴った各音の音程感も変わってきます。
つまりテーパーの形状を変えるということは、トーンホールの位置と大きさも同時に設計することになります。

テーパーによる差別化の例1:

見た目が同じに見えるYAS-855とYAS-875は、テーパーの違いで差別化されています。
その結果、855は生産完了し、875が現代まで残りました。

 

ネック

マウスピースの次に口に近いパーツとして、ネックは吹奏感、サックスを吹いたときの抵抗感や音色に大きな影響を及ぼします。
特にネックの角度ネックの長さは吹奏感と音色にとって大きな要素です。

ネックによる差別化の例1:

例えばヤマハはネック角度と長さ・途中の太さの違いでたくさんのネック・バリエーションを生み出しています。

 

ネックによる差別化の例2:

セルマーのシリーズ2とシリーズ3の吹奏感と音色の違いは、ネックの長さと角度で作られています。

 

その他の知っておいた方が良い「楽器にキャラクターを加える要素」

各音の音程(ピッチ)が変わる〜トーンホールの大きさ、位置

トーンホールをどこに開けるか、と言ったことは1980年代くらいから各メーカーとも機械を使ってシュミレーションしながら設計することが一般的だそうです。

それ以前の管体設計はアナログな試行錯誤で設計していたことが窺われ、そのためセルマーのビンテージのような「現代で再現できない微妙な音程感・音色」と言った個性も生まれていたと思われます。

響きが変わる〜管体の重さ

管体の重さは息の抵抗感を生むので、息の量、スピードが増すことになります。
その結果、音が遠くまで届き、管体が響くことにつながります。

その反面、軽い楽器に比べて演奏時に体力が必要になるので「小回りが効かない」「しばらく吹かなかったら音がうまく出せない」ということにもなります。

この「重さ」ですが、ネック正面につけるプレートやU字管の内側につけるプレートのような「わずかな部品」で影響が出ます。

重さによる差別化の例1:

ヤマハのカスタム、875と875EXを比べると、875の方が補強板などが多く取り付けられています。
このことから、875が875EXに比べて「プロを想定した、音の響き重視のモデル」だとわかります。 →875と855のパーツ
→875EXと82Zのパーツ

 

重さによる差別化の例2:

セルマーのシリーズ2を見てみると、過去に製造されたものの方がいろいろな部品が取り付けられていて、
現在のものよりも「重い」設計になっているのがわかります。

実際に吹き比べてみても、現行モデルの方が吹きやすく、音が明るくなっているのがわかります。

 

重さによる差別化の例3:

ヤナギサワはアルト、テナー、ソプラノのモデルを2ラインナップで展開していますが
他社モデルが「エントリーモデル」や「プロ・モデル」いった分け方をしているのに対してヤナギサワは
「ヘビー・モデル/重い仕様」と「ライト・モデル/軽い仕様」という分け方
をしています。

これはまさに「気軽に吹けるが小回りが効く」サックスか、それとも「吹き込みが必要だが音が豊かに響く」
サックス か…という選択
を設けているためです。

→ヤナギサワ
902と992のアーム
ライトウェイトとヘビーウェイト

まとめ

いかがだったでしょうか。サックスの特性を見極めるのは、そして自分に合ったサックスを選ぶには
“自分にとっての”「吹きやすさ」と「音の深さ・響き」のバランスが大切
ということがわかっていただけたと思います。

そして、この2つの要素は「反する」もので>自分にちょうど良いさじ加減を見つけるのが一番良い方法です。
これは人によっては

  • 「吹きやすさ=2:音の深さ・響き=8」だったり
  • 「吹きやすさ=7:音の深さ・響き=3」

だったりします。
自分にとっては「吹きやすさ:音の深さ・響き」の割合はどれくらいが気持ち良いだろう?と考えばがら
その割合が違う設定になっているもの…例えばヤマハの480シリーズとカスタムを吹き比べてみる、ヤナギサワの902と992シリーズを吹き比べてみる…などをやってみてください。

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