今回はカイルベルト特集の最後として「ステンシル」と「ToneKing裁判」を解説します。
カイルベルトの主なステンシル・モデル
「ナウハイム期」のカイルベルトを語る上で数々のステンシル・モデルをはずすことはできません。
カイルベルトはグラスリッツ期にも数多くのドイツ圏サックスのステンシルに関わっていますが、「ナウハイム」移行後は国外の有名ブランドへのステンシルとしてカイルベルト・モデルが世界に流通しました。
セルマー・デュッセルドルフ・メジャー『Major』
セルマー・ロンドン・ペンシルバニア『Pennsylvania』
セルマー・USA(H&A.Selmer)・バンディ・スペシャル『BUNDY Special』
キング・テンポ『KING Tempo』
アームストロング・ヘリティッジ『Armstrong Heritage』
クランポン・エクスプレッション『Crampon Expression』
カイルベルトの裁判沙汰
ユリウス・カイルベルトでは過去に『ToneKing』のモデル名を無断で使われ他社を訴えた…ということが2度あります。
裁判その① 『アマティ/AMATI』社の『ToneKing』使用問題
第二次世界大戦後、チェコ・スロバキアではアマティが国営企業として「V.F.コーラート」と「ユリウス・カイルベルト」を吸収しました。
そういった経緯からアマティは、カイルベルトが残した工場や部品を使い、サックスを製造・販売した時期があります。
この時期がアマティが創立された1945年頃から1955年頃まで続きました。
このことで1945年〜1955年製の『ToneKing』は、カイルベルト製ではなくアマティ製なのにも関わらずカイルベルトの”THE BEST IN THE WORLD”スタンプが刻印されています。
また、シリアル・ナンバーもそのままカイルベルト時代のものを流用している…という「スーパー・コピー品」になってしまっています。
その後もアマティは「ToneKing」のモデル名を使い続けたことから
その50年後、アマティはカイルベルトの中位モデルの組み立てを請け負うことになります。
裁判その② 『Dörfler & Jörka/D&J』社の『ToneKing』使用問題
『Dörfler & Jörka/D&J』はドイツのサックス・メーカーです。
1960年代にカイルベルトから訴えられることになります。
裁判の結果、D&Jの違法性は認められませんでした。その後は面白いことにカイルベルトとD&Jは和解し、カイルベルトの下請けとして関係と取り戻します。