【セルマー・シリーズ2と3って、違いがわかりにくい】
「セルマーのシリーズ2とシリーズ3って、実際の所どう違うの??」サックスをある程度やっている方なら、だれでも1度はそう思いますよね!
セルマー・シリーズ2とシリーズ3の違い…結論から言えば「ネックの造り」です。アルトとテナーは「角度」ソプラノは「デタッチャブル」か「一体型」か。これがシリーズ2とシリーズ3の音色・パフォーマンスの違いの一番大きな要素です。
~セルマーのサックスが、サックスの世界で一番!って言われているのは分かる。でもお店に行くとセルマーのサックスってたいてい「シリーズ2」と「シリーズ3」が置いてあるよね。「シリーズ3」が「シリーズ2」より高いっぽいんだけど、見た目あんまり変わらなくない…?~
そう思ってる人も多いですよね!
ヤマハのサックスなんかはわかりやすく「エントリー・モデル」とか「プロ・モデル」ってなっていて、中級者向け・上級者向けっていうくくりですよね。
じゃあセルマーも「シリーズ2」が中級者向けで「シリーズ3」が上級者向け??
…この記事はそんなギモンにお答えする為に書いてみました!
ちなみに私、タサキはサックス歴20年以上、演奏もしますが中古サックス専門店も運営させて頂いています。
そんな事からお陰様で新品メインの総合楽器屋さんより、たくさんの新旧サックスを触る機会に恵まれています。そこで、たくさんのシリーズ2とシリーズ3を吹き比べる事で気が付いた事を記事にまとめてみました。
この記事を読むことで以下の事が分かります。
- シリーズ2とシリーズ3の見た目のちがい
- シリーズ2とシリーズ3の音色と個性の違い
- 「シリーズ2」より「シリーズ3」の方が良いサックスなのか??
【セルマー・SA80シリーズ2とセルマー・シリーズ3の見た目のちがい】
それではまず「構造のちがい」からいきましょう!パっと見、シリーズ名の刻印以外は同じように見えるシリーズ2とシリーズ3ですが、よくよく見るとけっこう造りに違いがあります。そしてアルト、テナー、ソプラノでそれぞれ特徴がちがうので、順に見てみましょう。
<アルト・サックス編~トーンホール>
アルトサックスのシリーズ2とシリーズ3の違いは、次の2点です。
- シリーズ3の方がシリーズ2よりトーン・ホールが1コ多いです。
- シリーズ3には「ラ」の部分(フロントFキィの左となり)に調整ネジがついています。これはシリーズ2にはありません。
【↑シリーズ3”ジュビリー前”モデルのアルトサックスを紹介した動画です。2分39秒あたりから①のトーンホールと②の調整ネジが確認できます。】
<テナー・サックス編~ネックの角度>
お次はテナー・サックスです。
テナー・サックスもアルト・サックスと同じ外観の違いを持っているのでしょうか。
ここでは実際に2台の近い時期に製造されたSA80シリーズ2とシリーズ3を見比べてみました。
『SA80シリーズ2・テナーサックス』のシリアルナンバーは。
そして『シリーズ3・テナーサックス』のシリアルナンバーはです。
それではどうでしょう…??
???
…テナーのSA80シリーズ2とシリーズ3は、
見比べるとほとんど同じで違いが見つけられません。アルトでは最大の違いである「1コ多いトーンホール」もありません!
オクターブ・キィまわりやFフロント・キィのまわりなど2本に何も違いはありません。
なんとネックを交換してもちゃんとはまるくらい、管の口径も同じ。”Superaction80 serieⅡ”と”serieⅢ”っていう刻印を変えてる以外違いがないんじゃない?!
と思ってしまう程です。
しかし、よく比べると…ありました!ネックです。ネックの「角度」が違いました!
よくよく比べると、SA80シリーズ2ネックよりも、シリーズ3のネックの方が接合部からすぐにカーブをしています。
そしてさらにマーク6の6万番台(いわゆる5ディジット)のネックを持ってきて比べて見ると…
このネックのカーブは、マーク6の6万番台のものと比べるとそっくりな形状でした!
マーク6の6万番台のネックは後期マーク6よりも口径が太いので、やはりはまりませんでした。
マーク6のネックとシリーズ3のネックの形状はほぼ同じなんですね。これは興味深いです。
それにしてもネックの角度以外違いがない(??)だけで音のキャラクターが違うんでしょうか。サックスってすごいデリケートなんですね。
<ソプラノ・サックス編~ネックの構造>
さいごにソプラノ・サックスです。(バリトン・サックスは製造年の近いシリーズ3とSA80シリーズ2の在庫がなかったので、またの機会に!)
ソプラノ・サックスはアルト・サックス、テナー・サックスと違って分かりやすい違いですよね。
SA80シリーズ2・ソプラノサックスとシリーズ3・ソプラノサックスの一番大きな違いは「ネックの造り」です。(アルトとテナーはネックの造り=”角度”が一番違います。)
SA80シリーズ2はネック一体型で、シリーズ3はデタッチャブル・ネック(取外し式ネックのことです。)になっています。取り外せるネックを見たら「シリーズ3だな」と思ってください!
そういえばソプラノ・サックスって未だにこの「ネック一体型」と「ネック取り外し型」の両方がありますよね。
普通に考えると「取外し型」の方がメリットが大きい、と思いますよね。アルトやテナーのようにいろいろなネックを試せるし、コンパクトに収納できるし…
ではなぜ未だにネック一体型のソプラノ・サックスがあるのか?
それは…一体型とデタッチャブルでは「音に違いがあるから」なんです!
ちなみに私は個人的に「断然一体型」派です。
遠くに持っていく時は、「仕方なく」デタッチャブル式のソプラノを持って行ったりしますが、音は一体型が好きです。
セルマーに限らず他のメーカーでもこういった事はありますね。例えばヤマハのカスタム・モデル「YSS-875EX」はデタッチャブル型で、同じくヤマハ・カスタムの「YSS-82Z」は一体型です。
ソプラノ・サックスを購入される場合は、利便性だけでなくどちらも吹き比べてみて、それぞれの音色の傾向をつかんでおく事をおすすめします。
【セルマー・SA80シリーズ2とセルマー・シリーズ3 音色の違い】
〈シリーズ3はパワーがありはっきりとした音・シリーズ2は木管らしく深い中音域で息づかいが表現しやすい音〉
これはアルト、テナー、ソプラノ全般に共通しているな、と思っているんですが、シリーズ2の方が音色が木管ぽくて音が丸いです。高音域よりも中音域に太さがあります。
それに比べてシリーズ3は、輪郭がはっきりしたパワフルな音が出せます。
音楽ジャンルでいうと、シリーズ2は吹奏楽やジャズ、ジャズの中でもアコースティックなジャズで
シリーズ3は高音域と低音がはっきりとしていて、ポップスやロック、エレクトリックなジャズみたいな電気楽器と相性が良さそうです。
そんなシリーズ3ですが、このモデルの開発に携わったのは意外にもクラシック奏者の方なんですよね。
私の周りでは圧倒的にシリーズ2の方が人気ですね。これはたぶんシリーズ2の音の方が「今までのセルマーのサックス直系」という感じがするからでしょう。
シリーズ2はシリーズ3と吹き比べると音がこもって聞こえるけど、とりあえずどんなジャンルにも合う感じ。だけどシリーズ3はジャズ・スタンダードやビバップのようなジャム・セッションで良く演るジャズでは音が派手すぎる…という感じ。
こう書くとシリーズ2の方がシリーズ3より安いし、オールマイティなら断然シリーズ2じゃん!ってなりそうですね。
それでもシリーズ3の方が圧倒的に優れているポイントがあります。
それは「フラジオ域の出しやすさ」です!高音域のピッチがとっても安定していて、単音で「ビャー!」っと出すフラジオだけでなくて、フレーズもちゃんと演奏できるし、ピッチも抜群に安定させやすいんです。
この辺のメリットはロックやポップスを演奏する人にしか関係ないかも知れませんが、ライブやレコーディングで高音をミストーンなしに出さないといけない!って方には
だんぜん「シリーズ3」だと思います。
「シリーズ2」より「シリーズ3」の方が良いサックスなのか??〜まとめ〜
いかがだったでしょうか。構造を検証してみて感じる事ですが、やはり「シリーズ2」と「シリーズ3」は大きく違います。
それも、「グレードの違い」じゃなくて「音の特性の違い」で分けてあるんですね!
つまり
シリーズ3の方がシリーズ2よりも優れているのではありません!
- 木管的な温かい音が好き=シリーズ2
- 華やかで現代的な音が好き、または歯切れが良くノリが良い演奏が好き=シリーズ3
とイメージすると選びやすいのではないでしょうか。
また、これは意外に知られていない大事な事なんですがシリーズ2とシリーズ3はそれぞれのモデルの中で細かなマイナー・チェンジがあって、
「製造年」によって前期・後期などに分ける事が出来ます!(ビンテージに限らず、現行機種もです!)
★こちらの動画でSA80シリーズ2の細かい検証をしています。ぜひ参考にしてください。
★シリーズ3の細かな検証についてはこちらの記事をどうぞ!
セルマー サックス serie3/シリーズ3は製造年で違いがある!~前期・後期の見分け方