【selmer serie3『ジュビリー前モデル』には前期型と後期型が存在します。】
セルマー・サックスの定番といえばシリーズ2とシリーズ3です。ちなみにそれぞれの正式名称は『スーパーアクション80シリーズ2(以下SA80シリーズ2と記述します)』と『シリーズ3』です。
そうなんです。『シリーズ3』はただの『シリーズ3』です。以前、SA80シリーズ2の「ジュビリー前モデル」が、マイナー・チェンジのパーツから前期・中期・後期に分ける事が出来る、という記事を書きましたが、シリーズ3は『前期・後期』に分ける事ができます。今回はシリーズ3のマイナー・チェンジについて解説したいと思います。
ちなみに過去に書いたシリーズ2の「前期」「中期」「後期」について詳しく解説している記事はこちらです。↓
セルマーのアルトサックスシリーズ2の製造年での違い【jubileeとjubilee前モデル】
各モデルの違いを知ることは自分のサックスを選ぶ上で大切なことですが、実は同じモデルでも製造時期でさらに細かい違いがあることは、あまり知られていません。
この記事を読んで頂く事で…
- シリーズ3のジュビリー前モデルとジュビリー・モデルを見分ける事ができるようになります。
- シリーズ3の「ジュビリー前モデル」の中で「前期型」と「後期型」をすぐに見分ける事が出来るようになります。
それではさっそく、シリーズ3のマイナー・チェンジを見ていきましょう!
【基本編~シリーズ3のジュビリー・モデルとジュビリー・前モデル】
まずはセルマーから正式に公表されているマイナー・チェンジの知識から。セルマー・サックスの現行モデルは、2010年より「ジュビリー」として現行モデルを全て大幅にマイナー・チェンジしました。
ちなみにセルマーの現行モデルは「スーパーアクション80シリーズ2」「シリーズ3」「リファレンス」の3モデルです。
ここでは「シリーズ3」の「ジュビリー・モデル」と「ジュビリー前モデル」の大きな違いをまとめます。
以前書いたジュビリー・モデルについての記事はこちらです。この記事もぜひ参考にしてください。
セルマーの現行モデル「ジュビリー」モデルの違いとシリーズ2とシリーズ3の特徴
【ジュビリーとジュビリー前の違い①音が違う!】
これは「シリーズ3」に限らず、現行3モデル(SA80シリーズ2,シリーズ3,リファレンス)のアルト、テナー、ソプラノ、バリトン
全てに言える事ですが、
ジュビリー・モデルとジュビリー前モデルは別モノと言っていいほど吹奏感と出音の特色が違います。
<ジュビリー・モデルの音の特長>
ジュビリー・モデルを一言でいうと「最初から吹きやすくて輪郭がハッキリした音が出る」と言えます。
「最初から吹きやすく、比較的コントロールしやすくなった」のがジュビリー・モデルです。
<ジュビリー前モデルの音の特長>
以前のセルマーは、新品時には息の抵抗感が強く、吹き込んでいくことで吹きやすくなり、徐々に音をコントロールできるようになる…といったイメージでした。
個人的にはジュビリー前モデルの方が中低音の表現力が高く、セルマーらしくて良いな、と感じます。
ただし、ジュビリー・モデルの方が圧倒的に勝っていると感じる部分があります。それが「フラジオ音域のコントロール性・出しやすさ」です。
特に「シリーズ3ジュビリー」は、このポイントがどのメーカーのサックスよりも抜群に優れていると思います。フラジオ音域をトリッキーな音域ではなく、演奏でちゃんと使えるように音程・音質の両面でしっかりと工夫されているのは今の所、セルマー・シリーズ3ジュビリー・モデルだけではないかな、と個人的には感じます。
フュージョンやR&B、ロックなどソロで今どきの演奏をしたい方は、シリーズ3ジュビリー・モデルを1度試した方が良いと思います。
【 ジュビリーとジュビリー前の違い ②外観が違う】
ジュビリー・モデルは2010年のリリース当時、正式に以下の3点をジュビリー・モデルの特長として発表していました。これはアルト、テナーの区別なくジュビリー・モデル全般の特長です。
<ネック部のロゴ・デザイン>
<彫刻デザインとU字管接合リング>
…歴代セルマーサックスの彫刻について興味がある方は、こちらの記事も参考にどうぞ。
サックスの彫刻、意味あるの?~セルマー・モデル22から現行ジュビリー・モデルまで、歴代セルマー・サックスの彫刻~
【 本題~『シリーズ3/ジュビリー前モデル』 の前期と後期】
さていよいよここからが本題です。シリーズ3ジュビリー前モデルは、パーツ形状の違いから「前期」と「後期」に分ける事が出来るんです。
<アルト・テナー共通/テーブルキーの形状>
シリーズ3の前期と後期を見分ける1番の違いがこの「テーブル・キィの形状」です。
シリーズ3が初めて世に出た当初は、シリーズ3独自のテーブル・キィ形状を持っていたのですが、不評だったのか後期になるとSA80シリーズ2と同じテーブル・キィに変更となりました。
今でもこの前期の「シリーズ3オリジナルテーブル・キィ」を支持する方は結構います。
<アルト・テナー共通/サイドキーの配置>
サイド・キーの配置、傾きもアルト・テナー共に前期と後期で違います。
これは後期の方が断然操作性が良いです。
<アルト・テナー共通/サムレストの変更>
前期はサムレストがプラスチック製、後期よりメタル製に変更されています。
<テナー編/ネックのデザイン>
これはテナー・サックスだけに見られる特徴です。テナーのネックは当初、画像のように「Ⅲ」と刻印されたプレートが全面に施されていました。(アルトにはありません。)これが後期になるとプレートがないネックに変更されました。
前期と後期のネックを並べて比較すると、ネックのカーブの角度も変更されているのが分かります。ちなみに後期ネックはマーク6に近いネック・カーブです。
ネックは音色の違いに大きく影響を及ぼすと言われていますので、この事からもシリーズ3テナーの前期と後期では音色が違う事が分かります。
<アルト編/オクターヴ機構>
アルトはテナーに比べ、メンテナンス面で影響のある部分が変更されています。
まず、一番目を引くのがオクターブ機構の部品です。
前期モデルはかなり大掛かりなオクターブ・パーツで、細かいメンテナンスが可能な造りです。(上画像左の赤い部分です。)これは演奏する時にはあまり関係ありませんが、修理・調整の際に調整しやすい機構です。
これが後期~ジュビリーにはSA80シリーズ2と同じ簡略的な機構に変更されています。(上画像の右サックスの赤い部分)
【番外編~ソプラノには”スーパーアクション80・シリーズ3”が存在する?!】
シリーズ2とシリーズ3の正式名称は、「スーパーアクション80・シリーズ2」「シリーズ3」です。つまりシリーズ2はスーパーアクション80の系統で、シリーズ3は別モデル、という位置づけです。
…のはずですが、なんと実は「スーパーアクション80・シリーズ3」が製造・販売されていた時期がわずかに存在するのです!
以下のサイトで実機をお持ちの方が解説されているので、詳しくはこちらをご覧ください。
https://ameblo.jp/hyouhoshi/entry-12019302398.html
この記事でB.S.Fさんが詳しく解説してくださっていますが、こんな事実からもセルマーがサックスを試行錯誤を繰り返しながら製造しているのが分かりますね!
【まとめ】
いかがだったでしょうか。
シリーズ3の前期・後期の違いは、「アルト=調整・メンテナンスに違いが出る」「テナー=音色に違いが出る」というのがポイントです。また、アルト、テナー、ソプラノに共通している「テーブル・キィの違い」は、前期・後期を見分ける最大の特長です。操作性の面で言っても人によっては前期のシリーズ3オリジナル形状の方がよりしっくりくる方もいると思います。ぜひ前期・後期を触って操作性の違いを確認して欲しい所です。
シリーズ3に限らず自分のサックスを選ぶ時は、
ぜひモデル名で自分の欲しい傾向・特色を見極めた上で、さらにその機種の旧い個体、最近の個体をそれぞれ実際に吹いて、製造年での造りの違いを考慮してみると
サックス選びがさらに楽しいものになりますよ!
[…] セルマー サックス serie3/シリーズ3の製造年での違い~前期・後期の見分け… […]
[…] セルマー サックス serie3/シリーズ3の製造年での違い~前期・後期の見分け… […]