SemerMark6ソプラノサックスとヤマハYSS-62を取り上げる理由
今回取り上げるSelmerMark6とYAMAHA YSS-62は
現在生産されていない機種ですが、
「一生付き合う相棒として選ぶ趣味のソプラノサックス」
としては未だにこの2本が最高のモデルだと思っています。
先にお断りしておきますが、今回は、趣味としてじっくりと付き合っていくのに最適なソプラノサックスはどれか?という切り口で解説しています。
それではまず各ブランドのソプラノサックスについて解説します。
セルマーのソプラノサックス・モデル
セルマーの「SA80シリーズ2」や「シリーズ3」はダメなの??
と思う方も多いと思いますが、これらセルマーの現行モデルは、アルトやテナーだと問題ないのですが
ソプラノに限っては全音の雰囲気を統一したり、ピッチをそろえたりするのに結構慣れや練習が必要だと思っています。
セルマーのソプラノ・サックスは、本気で使いこなそうと思うと結構難しいのです。これはマーク6にも言える事です。
マーク6以外はその「使いこなしのむずかしさ」を補うほど音に魅力はないかな…という感想です。
(マーク6以前のいわゆる”オールド・サックス”は、また傾向がぜんぜん違うので、今回は対象外です)
これはプロの方など「ほぼ毎日吹き込む・練習する」という使い方ができる場合は別です。
そう言った方にとってはシリーズ2もシリーズ3も充分使えるモデルです。
ヤマハのソプラノ・サックス・モデル
対してヤマハは、現行モデルについては中堅モデルYSS-480からプロ・モデル(カスタム・モデルといいます)YSS-82Z,YSS-875EXまで、申し分ない『操作性』です。
(個人的には、ヤマハの歴代モデルの中でYSS-675だけは操作しにくいかな?という感じです)
ピッチも比較的安定していて、現行モデルならどれでも問題なし、という感じです。
その中で、
購入に必要な予算とポテンシャルのバランス、という意味では未だにYSS-62(後期)が一番だと思います。
※YSS-62の前期・後期についてはあとで詳しく説明します。
それでは、「どこがそんなに良いか??」をセルマー・マーク6とヤマハ・YSS-62それぞれ詳しく掘り下げてみたいと思います!
補足:ヤナギサワのソプラノ・サックス
今回の記事は「ヤマハYSS-62」と「セルマーMark6」に絞って比較していますが、「サックス世界3大ブランド」の1つとしてヤナギサワのソプラノサックスについても触れておきます。
ヤナギサワ・ソプラノでは、「エリモナ」がベストな管体だと個人的に感じています。
「エリモナ」とはヤナギサワが80年代に生産していた上位機種です。
ソプラノ・サックスでは「Sー880」と「Sー800」があり、880が上位機種です。
ご存知の方も多いように、そもそもヤナギサワが「品質の良いサックス・メーカー」として世界中に知られるようになった要因は、
まさにソプラノ・サックスの品質(特にピッチの良さと響きのバランス)にありました。
独特な響きといろいろな素材(シルバー、ブロンズなど)が選べる管体
そしてソプラノ・サックスで世界ではじめてデタッチャブル・ネックを採用した点
など、ヤナギサワのソプラノサックスは、ソプラノサックスの品質においてまさに不動の地位にあると思います。
…ですが、「響き重視」の為か、ヤナギサワの
現行モデルでグレードの高いソプラノサックスは
吹いたときの抵抗感が若干強めで
やや小回りが効かない、細かいニュアンスが付けにくい
というのが個人的な感想です。
その中で上記の「エリモナ」のS-880は、
上位モデルで魅力的な響きを持ちながら
現行のヤナギサワと大きくテイストが違う
んです。
ヤマハ並の操作性と独特な響き、音個性。
この2つを兼ね備えている
80年代の銘機、エリモナのソプラノサックス。
ヤナギサワからソプラノサックスを選ぶとしたら
エリモナが
ヤナギサワの中で(一生ものの相棒としては)ベストだと思います。
セルマーMARK6 ソプラノ・サックスの良いところと難なところ
Selmer Mark6ソプラノ良いところ
ケニーGをはじめ、多くのプロ・ミュージシャンが好んで愛用するのがセルマーのマーク6です。
彼の演奏に見られるように、
セルマーMark6ソプラノサックスはとにかく音が滑らか!艶やか!
独特の柔らかさと甘く深い音色は、セルマーのソプラノ全モデルの特長という訳ではなくて、この「Mark6」特有のものです。
Selmer Mark6ソプラノ難なところ
セルマーマーク6ソプラノ・サックスの悪いところ。それは「操作性」です。
このMark6は、キィの形状がオールド・サックスのままなのです!
実際に手にとって演奏して頂けば確実にわかりますが、現代のサックスのように人間工学的な配慮が全くありません。笑
なので、小指が余計なところにぶつかるのは当たり前。こちらが、構えと指使いをいかに楽器に合わせられるか…が問われる楽器です。
アルト・サックスやテナー・サックスのMark6の感覚でイメージしていると、とんでもない目にあいます笑
特に高音部サイドキーとテーブルキーは1930~40年代以前のサックスの形状で、ヤマハなど現代のオフセット・モデル(トーン・ホールを真ん中から左右に分け、一直線に並べていないもののこと。詳しくは→)に慣れた方は、その扱いにくさにまずびっくりする(もしくは心が折れる)と思います!
また、ストラップをひっかけるリングがありません。ストラップを使ってソプラノを演奏し慣れている方は(私もストラップ派です)
「リング付に改造してある個体」を探すか(こういった個体には結構出会います)ストラップなしの演奏に慣れるかしないといけません。
…ただ、こういった「オールドサックス並みの扱いにくさ」を使いこなす価値は充分ある、と思わせる…それがセルマーMark6ソプラノサックスの唯一無二の魅力です。
ヤマハYSS-62 ソプラノ・サックスの良いところと悪いところ
ヤマハYSS-62ソプラノサックス良いところ
ズバリ良いところは2つ。
- 操作性が抜群に良い
- 音にツヤ、豊かさがあるまま、コントロールしやすい
YSS-62の良いところ、というかヤマハのソプラノ・サックスの素晴らしいところはその操作感です。特にテーブル・キィーやサイド・キーのポジションは素晴らしくて構えにストレスがありません。
これは逆に最近のリーズナブルなソプラノサックス、例えばアンティグアやシャトーなんかのソプラノでは当たり前の事になっています。
じゃあ何がいまさらスゴイの…?
と思われるでしょう。
ですが、これらの「リーズナブルな」ソプラノサックスはMark6のような音の柔らかさ・深さ、音を伸ばした時のピッチの安定感に欠けます。
なんといってもソロ演奏の最大の障害が、ソプラノサックスは高音域になるとかなりピッチが不安定になる、という部分なんです。
これは通常の演奏や、一人で練習している時にはあまり気にならない箇所です。
そこでヤマハYSS-62の登場です。
ヤマハのソプラノ・サックスは全体的にこの音程部分が他のメーカーのサックスよりかなりしっかり造られています。
ただ、ヤマハYSS-475など中堅モデルになるとどうしても「吹きやすさ」の為に「音の厚み」が犠牲になっている感が否めません。
もちろんヤマハYSS-875EXやヤマハYSS-82Zだと操作感、音程ともにバッチリなのですが「完成しすぎている」というか、モデルとしての色が出来すぎていて、「正しい875EXの音」「正しい82Zの音」が決まっていて、それを目指す練習になるという感じが若干しています。
そういった点で、YSS-62はヤマハ製プロ・モデルとしての音程感・操作性を備えた上で、まだ音の色付けがされていない所がセルマーMark6のように音創りを愉しめる余地があるという意味でMark6の双璧をなすソプラノサックスだと思います。
また、YSS-62はノーマル・ラッカー仕上げのストレート・ネック・タイプならセルマーのサックスやヤマハ現行カスタムよりずっとリーズナブルな値段で手に入る所も好感が持てます。
ヤマハYSS-62ソプラノサックス難なところ
これもズバリ2つあります。
- Mark6と比べてしまうと音の厚みに欠けるところ
- 前期モデルは「かなりピッチが悪い箇所がある」ところ(後期モデル解決済み)
です。
ソプラノ・サックスに関しては、私的には未だにMark6を超える音色のものは出ていないと思っています。(もちろん操作性は別にして)これはセルマーの現行機も含めて、です。
なので、Mark6と比べると軽い感じがしてしまいます。(この辺りは完全に好み次第です)
そしてもう1点、難なところというか「注意点」ですが、YSS-62には初期モデルと後期モデルがあって、初期モデルは高音部のピッチに致命的な問題がある、という点です。
ご覧のように後期モデルは高音部に小さいトーン・ホールが2つ並んでいますね。
これによってYSS-62後期モデルはピッチの弱点を解消しました。
これはヤマハのソプラノ独自のピッチ対策になっていて、現行モデルの82Zにも引き継がれています。
まとめ
セルマーMark6ソプラノサックスとヤマハYSS-62ソプラノサックス
について、まとめると以下の3つです。
- 音個性はセルマーMark6が最高。ただし使い慣れるのが難しい。
- ヤマハYSS-62(後期)は操作性が抜群で音個性に素晴らしいがMark6よりは軽い音。
- YSS-62とMark6は方向性がぜんぜん違うので、どちらかの代わりにはならない。
何度も言いますが、ソプラノサックスはアルトやテナーのように完成されてはいません。なのでマイ・ソプラノサックスを手に入れる場合は
そんなソプラノサックスの特徴を理解して
「外せないのは音か操作性か」と考えて選ぶようにしてください。