安いのが本当の魅力ではありません。中古サックスが最強な理由(条件つき)
中古、というと普通は「新品より値段がやすくなっているから買うもの」というイメージを持たれている方がほとんどだと思います。
ですが、結論から言うと「楽器〜特にサックスはこの常識が通用しません。」
それなのに結構サックスを長く練習している方でも、自分のサックスを選ぶ時に新品の中から「だけ」選ぶ方が非常に多いんですよね。
そこで今回は「サックスは中古こそ最強説」について解説したいと思います。
サックスを選ぶ時に中古サックスの方が良い決定的な理由
- サックスはその人の「歌声」。声はその人を現す「個性」の一部で「流行り」とか、楽器の新しさ、古さで決まるものではありません。
- 新品はその時代の流行りに応えるためにつくられている。なので新品は「個性を選ぶ」「相性を選ぶ」という観点から見ると選択肢が圧倒的に少ない。
- サックスは吹き込んで、タンポ・管体をなじませる、という「アイドリング」を行ってはじめてスタートラインに立てるもの。中古サックスはサックスをなじませる過程を省略できる。(前のオーナーさんが吹き込んでいるから)
中古サックスに対する大きな誤解
こういった事を書いてもやっぱりほとんどの方は「中古サックス=新品サックスの型落ち」
というイメージのはず。
私も実際に中古サックスをたくさん扱う立場になるまでは
中古サックスに対して
そんなイメージでした。
そこで決定的な事実を3つ。
【衝撃】たくさんのサックスを扱うことでわかった3つの事実
実際にサックス専門店をやってみると、個人で一生涯出会う以上の
たくさんの新品サックス・中古サックスに触れます。
その結果それまで知らなかった、
以下の衝撃的な事実を知ることになりました。
中古サックスと新品サックスの衝撃的な事実
- サックスってきちんとメンテナンスをすれば100年前のサックスも現役で使える
- 新品は実は完璧な状態ではない!むしろ購入後に組み直したりバランス調整したりして、はじめて本当のポテンシャルが引き出せる(有名メーカーのサックスでも)
- 楽器の反応が悪いのは、たいてい「部品のズレ」「マウスピースのゆがみ」によることが多い(個人の練習量よりも!)
みなさん、特に2番めの「新品は完璧な状態ではない!」ということは、意味がよくわからないと思います。
これは中国製などの安いサックスのことをいっているのではありません。
某有名ブランドのサックスでさえ、家電製品で私たちが慣れているような厳しく管理された品質、というのは望めない…これがほとんど知られていないサックスの衝撃的な事実なのです。
新品状態のサックスでは、ほんとうのポテンシャルは引き出せていないんです
つまり有名メーカーの新品サックスでも、購入後に トーンホールとタンポをきっちりとあわせ直したり、キィの複雑な部分をしっかりと組み直したりする作業が必要ということなんです。
この事実は、プロ奏者の方でも意外に知らなかったりします。
それはそうです。
(特別に手を入れられた特定の)新品しか扱った事がなかったり、自分のサックスしか触る機会がなければなおさらです。
現行品のサックスと、過去に造られたサックスの細部までこまかく比べたり、
たくさんのリペア経験と探究心を持った、何人かのリペア職人さんと交流させて頂いたり…
という中で、この「新品サックスは完璧な状態ではない、と言う事実」がはっきりとしてきました。
そして私自身ははますます
「新品サックスよりも中古サックスのほうが素晴らしくなる可能性を持っている」
と確信するようになりました。
なぜなら、例えば「Aモデル」と言うサックスを新品30万で購入できるとすると、
中古の「Aモデル」なら新品よりも安く購入でき、余ったお金で充分な調整を施す費用に回せるからです。
つまり、新品サックスよりも断然良いのは、「しっかりと調整された」中古サックスです。
これに勝るものはありません。
同じ予算を使うなら、本体+調整セットで考えるべき
新品サックスでも中古サックスでもそうですが、なかなか出しにくい音や、
反応が悪い音がある、といった場合、誰でもまず疑うのは自分自身。
「自分が未熟なせいでちゃんと音が出ないんだ…」ということですよね。
実はこれ、「そのサックスやマウスピースの調整が原因」ってことがほとんどだったりするのです。
私自身も、ほんとうに長年こういった悩みにつきまとわれて
「オレってなんでいつまでも下手なんだろ」「また自分の悪いところが見つかった…」
という感じでサックスをあまり愉しめなかった時期がかなり長かった感じがします。
これはサックス本体に限らず、マウスピースにも言えます。(そしてマウスピースは管体以上にもっともっと影響が大きい部分です!)
マウスピースも新品状態は完璧ではない!ほぼ全ての個体がバランス調整が必要(どんな有名ブランド品でも!!)
これも意外だと思いますが、
有名なところでは「Dukoff/デュコフ」というブランドのマウスピースなんか良い例ですよね。
(Dukoffは、個体品質のバラつきが激しすぎて店頭に並んでいる新品をそのまま買ってきてもまともに吹けない、というのは有名な話です。)
これはレーザートリム仕上げなんかの精密機械を使ったマウスピースも同じです。
現在流通・販売されているマウスピースの中で、全ての個体がロケットの部品のように精密に仕上げられている、というモデルは存在しません。(どんなに高額でも)
つまり、
管体もマウスピースも購入後まずは調整を行ったほうが、(練習の)余計な回り道を回避することができる
この事実をおぼえておいてください。
サックスを買うときのポイント4つ
最後に「調整された中古サックス」のほうが「新品サックス」よりも断然良い…ということを踏まえて、サックスを選ぶ方ときのポイントについて4つにまとめます。
- 「新品サックス=最高の状態」ではない。
- 購入検討の際は「新品サックス→売価」と「中古サックス→本体+調整費用」の比較をする。「売価の安さ」よりも「コスパ」を考えるべき
- 「人気の機種を探して、その中で最安の個体を選ぶ」という「電化製品の購入パターン」はやめる(ここまで記事を読んでおわかりの通り、なんの意味もありません。)
- ただし、「きちんと調整された個体から選ぶ」のが前提です。(新品も中古も)
サックスはたしかに「大量生産品」の部類に入ります。ですが、演奏者の「声」になるとってもパーソナルな道具なのです。
こういった事がなぜ一般的に知られていないのか?というと、もちろん新旧のサックスを実際に見比べる機会がほぼない…という事が大きいです。
そのほかの要因として
たいていのサックス取り扱い店は、「メーカーの新品製品を販売することが最優先」(お店では現行機種しかすすめない)
ということがあるためです。
まとめ
サックスは、過去に吹き込まれてきた経歴があって、長い時間を生き残ることでより音が深くなるものです。
過去に購入され愛用されその間、何度も手を入れられている中古サックスは、
大なり小なりよほどの事故品でない限りそれぞれ個性を持つまでに育っています。
サックスを手に入れる際は、家電のような大量生産品的な選び方ではなくて
「自分の声として長く付き合う」という基準で
中古から新品まで広く比較検討してみてください。
[…] サックスの選び方【前知識編】サックスは中古が最強!説(条件つき) […]