オールド・サックスとは
今回はオールド・サックスについて解説したいと思います。 ここでいう「オールド・サックス」とは、ヴィンテージ・サックスの中でも1940年代以前のアメリカ製サックスのことです。
※アメリカ以外のヨーロッパのオールド・サックスについては、以下の記事で深く掘り下げています。参考にしてください。
ヴィンテージ・サックスとオールド・サックス
ヴィンテージ・サックスとここでいうオールド・サックスとの違いは「操作性と音色のバランス」
- ビンテージ・サックス(1950年以降)キィ操作は現代のものと基本同じで音が現代のサックスと違う。
- オールド・サックス(1940年以前)キィ操作が現代のものと違う。音も現代のサックスと違う。
サックスを知ると、必ずといっていいほど「ビンテージ」が欲しくなるものですが、 私は個人的にこの「オールド・サックス」を愉しむ、という事をおススメします。
アメリカン・オールド・サックス
ではどんなオールド・サックスがあるのでしょうか。 1940代以前のサックスというと、 「オールド・サックス」は特にアメリカ製のブランドのものが多く、現在でも入手できる個体が結構あります。 もちろんオールド・サックスはアメリカだけでなくイギリスやドイツ、ロシアなどいろいろな国のメーカーが ありますが、1930年代のアメリカ製のものが一番手に入れやすいです。
日本国内でネット・オークションや楽器屋さんで目にするオールド・サックスは圧倒的にアメリカ製のものが多いので、ここでは特に「アメリカン・オールド・サックス」に絞ってご紹介します。
アメリカン・オールド・サックスはジャズに特化したサックス
アメリカン・オールド・サックスの最大の特徴はジャズ用に作られているということです。1920年前後のアメリカでは「スィング・ジャズ」が爆発的にヒットしました。
アメリカのサックスは、この「スイング・ジャズ」需要と、その後の第二次世界大戦中のマーチング・バンド需要によって大きく栄えたのです。
アメリカン・オールド・サックスの種類と使用していたサックス・プレイヤー
C.G.Conn/コーン
使用していたミュージシャン
- チャーリーパーカー(アルト・サックス)
- レスター・ヤング(テナー ・サックス)
主なモデル
「New Wonder/ニュー・ワンダー」「Mシリーズ/”Lady Face”」
Buescher/ビッシャーまたはビシャーまたはブッシャー
アルト:楽団 テナー:ソニー・ロリンズ
※Buescherついて詳しいことは、以下の記事をご覧くください。
Martin/マーティン
アート・ペッパー
KING/キング
キャノンボール・アダレイ
【アート・ペッパーに見るサックスによる音の違い~オールド・サックスの音色~】
アート・ペッパーは初期の代表作(1957年)「art pepper meets the rythm section」でマーティンの「コミッテイ3/ザ・マーティン」というモデルを使用しています。その後、クランポン/Buffett Cramponの「スーパーダイナクション/Super Dynaction」を経てセルマー(Mark7→Mark6)に移行します。
マーティンで演奏しているアルバム曲
↑アート・ペッパーがマーティン/Martinの「ザ・マーティン/the martin(Comitiee3)」というアルト・サックスを愛用していた頃の素晴らしい演奏が聴けます。
クランポンで演奏しているアルバム曲
↑アート・ペッパーがクランポンの「スーパーダイナクション」アルト・サックスを愛用していた頃。アルバム「Living Legend」1976年
セルマー移行後のアート・ペッパーのアルバムを聴いてみると、太くきらびやかな音色になり、サックスによって音色が変わるのがよくわかります。
セルマーで演奏しているアルバム曲
↑アートペッパー1980年のアルバムから。ここではセルマーのマーク7を使用しています。
オールド・サックスはビンテージより安い!
昔のサックスの音が好き、でもビンテージ・サックスはめちゃくちゃ高いし…という方は ぜひオールド・サックスを探してみてください。 オールド・サックスなら調整代を含めて20万〜30万前後の予算で手に入れることができます。
オールド・サックスの注意点
ここまで読んで、「オールド・サックス??ちょっと気になるな…」と思ってくださった方のために オールド・サックスを選ぶ際の注意点をいくつかお伝えしておきます。
修理、調整しないと演奏できない個体がほとんど
ネットなどでオールド・サックスを探すとき、一番大事なポイントはここ。やはり100年近く前のサックス雨になるので何らかの修理・メンテナンスは必要と考えて手に入れましょう。オールド・サックスは
- 現代のサックスとかなりキィ周りの構造が違う
- 現代と違うタンポが必要
など、今のサックスとだいぶ違う構造なので、基本、普通のサックス修理屋さんではその個体を活かすような修理はできないと思った方が良いです。修理できても、現代のタンポに付け替えたり、当時のサックスの特性を把握しないまま修理してしまうお店もあったりするので事前にネットで調べて、オールド・サックスの修理・調整を得意とするリペア工房を押さえておきましょう。
操作に慣れが必要な場合が多い
特にテーブル・キィは現代のサックスとキィ配置が違います。B、B♭が「横並び」になっていることが多いのでテーブル・キィを重点的に練習することになります。 ただ、どれか1つオールド・サックスを使い慣れるとこの時代のサックスはどれも違和感なく演奏できるようになります。なので、1度オールド・サックスに慣れておくといろいろなサックスを演奏できる楽しみが広がります。
耳でピッチを合わせる必要がある
オールド・サックスはそれぞれの音のピッチの幅、遊びが広いので、しっかりと耳でピッチを意識しながらアンブッシュアをコントロールする必要があります。現行モデルしか吹いたことがない方がオールド・サックスを吹くと、「指はあってるけどオンチに聞こえる」となりがちです。
まとめ〜オールド・サックスの特徴を知って、上手くつきあう
オールドサックスはピッチが悪くて使えない、と言われますが、これは上でも書きましたが ピッチが悪いというよりも 「ピッチの遊びが広い」というニュアンスです。 現代でのソプラノサックスを思い浮かべてみるとわかりやすいかも知れません。 アメリカン・オールド・サックスは操作に若干の慣れが必要ですが、 30年~50年代のアノ音をだしたいならぜひ試す価値ありです。